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日銀のマイナス金利政策について


─ 本来の金融緩和政策への回帰 ─


[2016.2.1]




 去る1月29日、日銀金融政策決定会合において、マイナス0.1パーセントの政策金利が決定された。

 黒田東彦日銀総裁は同日の会見で、緩和政策には従来の「量」と「質」に「金利」が加わったとし、「3次元のオプションを、必要があれば躊躇なく活用する」と今後の追加緩和余地を強調した。

 ちなみにマイナス金利政策は、ヨーロッパでは一昨年6月から実施されており、現在の欧州中央銀行(ECB)の公定歩合はマイナス0.3パーセントである。

 2013年4月の量的金融緩和、2014年10月の追加緩和に続く第3弾の異次元金融緩和政策であるが、金融政策としては邪道の量的緩和でなく、今回はあくまで王道である金利政策の方向で金融緩和を実施したことは、大いに評価できる。

 そもそも日銀が民間銀行から国債を買取るという量的金融緩和の方法では、現金が市場に還流することは無く、そのまま日銀内の当座預金に累積されるだけであった。現在、民間金融機関が日銀に預けている当座預金残高は250兆円に上ると言われ、それらが手付かずの状態で積み上げられているだけであった。ある程度は国債の購入に充てられたが、民間銀行が保有する国債を日銀が買い戻して、再び日銀内の当座預金に積み上げられるわけだから、実際の現金は、全く動いていない状態であったと言える。

 これでは実体経済に何の効果も期待できないのは当然である。

 これに対し、今後は金利政策を中心とした金融政策が期待され、遅きに失したとはいえ、日銀がようやく本物の金融緩和政策に回帰したことは歓迎すべきであろう。

 昨年は、中国バブルの崩壊、原油価格の下落、FRBの利上げといった諸要因により、オイルマネーの金融市場からの撤退と米国の金融引き締めによる世界同時不況が生じ、今年1月までその影響は続いた。

 一方、 安倍政権は「株価連動内閣」と言われるように、内閣支持率は日経平均株価に連動する性質を有している。言わばアベノミクスへの期待感は、安倍政権の生命線でもある。安倍政権としては、今年夏の参院選までには、「円安株高」を演出し、来年の消費増税までには国内景気を回復させなければならない。

 今回の日銀によるマイナス金利政策は、政権のこうした思惑を反映したものであった。

 マイナス金利政策の当面の目的は、年初来の円高株安の急激な流れを阻止することと、春闘で賃上げとベースアップを可能にすることである。それには、3月の日銀金融政策決定会合では遅過ぎる為、1月の会合でサプライズを出す以外には無かった。またこれにより、甘利大臣の収賄問題は消し飛んだ。まさに絶妙のタイミングで発表されたと言ってよい。

 金融当局が期待している経済循環は、「賃金上昇 → 個人消費拡大 → 物価上昇 → 企業収益上昇 → 賃金上昇」というインフレ・サイクルである。

 ただしこれは、失敗すればそのままデフレ・スパイラルへと転化する危険性を孕んでいる為、注意が必要である。とりわけ、「消費拡大」の段階には困難を伴う。

 マイナス金利によって預金の利息が減る上に、円安の影響で輸入に頼る食品や石油の価格が高騰する状況においては、個人消費は縮小せざるを得ない。

 また民間銀行にとっては、貸付金の利息収入が減るため、銀行の経営は困難になる。

 マイナス金利による金融緩和政策の大きな問題点として、まず第一に「民間の資金需要が無い」ということが挙げられる。円安になったからと言って、民間の設備投資が急に増えることはあり得ない。資金の借り手がいなければ、行き場の無い資金の行き着く先は、国債購入か、海外流出しかあり得ない。

 必然的に民間金融機関の選択は、最も安全な金融商品である米国債の購入に向かわざるを得ないであろう。

 昨年暮れに利上げを決定したFRBは、今年3月にも追加利上げが予想されており、完全に金融引き締めモードに入っている。民間銀行など金融機関にとっては、ほとんど金利の付かない日本国債を買うよりも、米国債を買って保有していた方が確実に利益になる。

 少なくとも、マイナス金利になったからと言って、民間銀行から国内企業への融資が増えるなどということは考えられない。どの金融機関も、貸し倒れリスクの回避が優先するからである。

 結論から言えば、マイナス金利政策によってもたらされるものは、「円安」のみと言って過言ではない。

 しかしながら、「株価連動内閣」と呼ばれる安倍政権としては、それで十分なのである。「円安株高」さえ演出できれば、安倍内閣は高い支持率を維持し得るのであるから、実体経済については全く考慮する必要は無いのである。

 いずれにせよ、マイナス金利政策により、今後は日米間の金利差はますます拡大し、円安ドル高は加速することになる。

 長年にわたり、日米両国の金融当局は共に協調路線をとってきたわけであるが、今回、FRB利上げから僅か1カ月の間に、日銀がFRBと正反対の金融政策の実行を宣言したのであるから、これを背信と見做す米国による経済的逆襲が予想される。

 大統領選を秋に控えた米国内では、対日強硬派が力を増すであろう。一寸先は闇の時代であるから、トランプ氏のような排外的ポピュリストが大統領にならないとも限らない。

 いよいよ我が国は、未曾有の国難の時代が到来しつつある。

 小粒の政治家では、到底太刀打ち出来るものではない。

 安倍総理の今後の活動を注視していきたいものである。








《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
東京都千代田区永田町2-9-6
十全ビル 306号
TEL: 03-5501-3413