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防衛省問題を考える
またもや阻止された官僚改革
安部内閣退陣の折りに懸念していたとおり、公務員改革は頓挫した。
福田政権が出来て間もなく、今年中に成立するはずだった「国家公務員制度改革基本法案」は来年以降に先送りされることとなった。その間に解散・総選挙などが予想される為、事実上の廃案と言ってよい。
官僚主導の政治を抜本的に改革し、政治家がイニシアティブを持つ政治を実現するという、政策決定過程の改革は、未だ誰一人として為し得ていない。93年に細川内閣がそれをやろうとして、結局退陣に追い込まれた。
その後、90年代後半の橋本内閣の行政改革構想も骨抜きにされ、枠組みだけを変えて構造は何一つ変わらない2000年の省庁再編という茶番が行われた。
2001年に発足した小泉内閣は、当初から「郵政改革こそ構造改革の本丸」などという官僚にミスリードされたスローガンを掲げ、郵政民営化を達成して大量に公務員を削減したものの、結局は外部に独立行政法人や公益法人を増やしただけに終わった。
いかにも大きな改革をやったかのように見せかけるパフォーマンスだけは得意だったが、最も重要な政策決定過程の改革という真の「構造改革の本丸」には、一切手をつける事は無かった。そのおかげで小泉内閣は長期政権を保持し得たと言っても過言ではない。
安部政権は、細川政権以来、初めて本格的に官僚改革に取り組もうとしたが、結果的に退陣した。その後を受けた福田内閣は、安部内閣を反面教師とするかのごとく、公務員制度改革を引っ込めた。当分の間、福田政権は安泰であろう。
看過できない防衛省問題
この秋の臨時国会では、テロ特別措置法によって日本が米海軍に提供した燃料が、イラク戦争に流用されていたのではないかという疑惑から、追及が為された。
インド洋で日本の自衛艦が2003年2月25日に行った米国の補給艦への給油量は、当初「20万ガロン」とされていた。石破防衛省長官や福田官房長官(当時)も給油量を「20万ガロン」と発表し、「イラク攻撃に使われることは現実的にあり得ない」と説明していた。しかし、実際は20万ガロンではなく、80万ガロンであった。80万ガロンであれば、イラクまで十分に移動できる給油量となる。
防衛省は10月22日、この問題に関する報告書を発表した。
それによると、2003年2月25日、海上自衛隊の補給艦「ときわ」が米補給艦「ペコス」に給油した約80万ガロンの数字を、米駆逐艦「ポール・ハミルトン」への約20万ガロンの給油量と取り違えたという。海上幕僚監部防衛部運用課では、担当者がパソコンに取り間違えて入力したとのことである。さらに、同年5月9日午後、福田官房長官の記者会見前に、担当課長(防衛部防衛課長)がその間違いに気付きながら、それを上司や内局に報告しなかった。報告しなかった理由は、米空母「キティホーク」への間接給油問題(燃料の転用問題)が沈静化しつつあったことを考慮したからだという。
しかしながら実際には、その当時、海上自衛隊が提供した油がイラク戦争に転用されたという疑惑が「沈静化しつつあった」というのは事実に反している。当時は転用疑惑が沸騰していた最中であり、その種の判断は、必ず内局に委ねられなければならず、制服組トップの課長には全ての報告義務があったはずである。
ここで問題なのは、担当課長(=制服組トップ)が、「沈静化しつつあった」という政治的判断をし、「上司や内局(=背広組)への報告を行わない」という政治的決断までしていたという点である。
もし防衛省が今回発表した報告書の内容が真実であるとすれば、自衛隊では恒常的にシビリアンコントロールが全く無視されているという実態が、図らずも露呈されたことになる。
官房長官の発表前に、防衛省の制服組が異なる事実を知っていた。にもかかわらず、それを防衛大臣および政府に対し、意図的に隠していた。事務次官にも局長にも事実を知らせなかった。これは、文民統制の根幹を揺るがす極めて重大な問題である。
また、これほどの大問題を抱えた報告書を平気で発表できる防衛省も問題である。事の重要さが分かっていないということは、シビリアンコントロールを日頃から軽視してきた証拠でもある。
防衛省内部には、制服組と背広組との確執があると言われる。日常的に制服組のミスを背広組に隠す体質があるとしても不思議ではない。
この他にも多くの重要な情報が制服組の課長止まりで、そこから上には報告されないものが数多く存在しているはずである。
制服組の立場としては、「何もかも背広組に報告したら軍事機密が漏洩してしまう」という考えがあるだろう。
しかしながら「文民統制」とは、何が重要機密で何が重要機密でないかを判断するのはシビリアンであって、制服組ではないということである。全ての軍事情報は政府に報告が上げられなければならないのである。
シビリアンを無視して制服組だけで情報を扱う体質は、制服組による情報の私物化につながる。こうした体質が、先般の自衛官によるイージス艦情報の機密漏洩事件をもたらしたとも言える。それによって日米関係が悪化したならば、その被害は国家全体に及び、制服組が責任を取れる範囲を超えてしまうことになる。だからこそシビリアンコントロールが大原則なのである。
今回の防衛省の問題では、制服組レベルでの勝手な判断と決断によって政治が操作されたことになるが、これは文民統制が機能していない事を露呈した一件であると同時に、他のあらゆる省庁と同様、実質的な政策決定権が政治家に無いことを意味している。
私たちはこの防衛省問題を、単に防衛省だけの問題として留めることなく、行政全体の構造的問題として捉えなければならない。
そして一日も早く政権交代を実現し、公務員制度の抜本的改革と、政策決定過程の構造改革を断行しなければならないのである。
[2007.11.1]
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