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「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













核戦争も辞さない覚悟で侵略準備をする中露


東西で連動するウクライナ侵攻と台湾有事


[2022.2.10]




ベラルーシとの合同軍事演習を行うロシアの戦車部隊
PHOTO(C)AFP=時事


骨抜きにされた「中国非難決議」


 2月1日、衆議院本会議において、「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案」が、賛成多数で採択された。

「中国非難決議」は、もともと昨年の通常国会で採択される予定であったが、親中派の公明党の抵抗で実現しなかった経緯がある。

 西側諸国が次々と中国非難決議をする中、先進国では日本だけが取り残されていたのであったが、ようやく北京冬季五輪開幕の直前になって、国権の最高機関において人権重視の姿勢を示す事が出来た形になった。

 しかしながら、決議文の内容は公明党に大幅に譲歩した結果、数多の表現が変更または削除され完全に骨抜きにされてしまった。

 当初盛り込まれる予定だった「人権侵害」や「非難」の文言は、いずれも公明党の要請を受けて改変や削除が為され、最も肝心の「中国」の国名さえ明記されなかった。

 なお参議院での決議採択は、北京五輪後になる予定である。

 今回衆議院で採択された決議案の全文は以下の通りである。



新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案

(註: 当初案のタイトルは、「新疆ウイグル等における深刻な人権侵害に対する非難決議案」であったが、「人権侵害」は「人権状況」に変更され、「非難決議案」の「非難」が削除されて単に「決議案」とされた)


 近年、国際社会から、新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港等における、信教の自由への侵害や、強制収監をはじめとする深刻な人権状況への懸念が示されている。

(註: 当初案では、「近年、新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港、ミャンマー等では、信教の自由への侵害、強制収監をはじめとする深刻な人権侵害が発生している。」と、客観的事実に即した表現であった。それをわざわざ「国際社会から」「懸念が示されている」と、あたかも伝聞や風説のように書き換えられた。また、昨年のクーデターで中国の傀儡政権になった「ミャンマー」が削除された。ミャンマーにおける人権侵害は無視して良いという事だろうか)


 人権問題は、人権が普遍的価値を有し、国際社会の正当な関心事項であることから、一国の内政問題にとどまるものではない。

 この事態に対し、一方的に民主主義を否定されるなど、弾圧を受けていると訴える人々からは、国際社会に支援を求める多くの声が上がっており、また、その支援を打ち出す法律を制定する国も出てくるなど、国際社会においてもこれに応えようとする動きが広がっている。

(註: 当初案は、「この事態に対し、一方的に民主主義を否定されるなど、弾圧を受けている人々からは、国際社会に支援を求める多くの声が上がっており、また、その支援を打ち出す法律を制定する国も出てくるなど、国際社会においてもこれに応えようとする動きが広がっている。」であった。「弾圧を受けている人々」を、「弾圧を受けていると訴える人々」と、わざわざ「と訴える」を挿入する事によって、実際に弾圧を受けている人々にあたかも「作為」や「意図」があるかのような表現へと変更された)


 そして、日米首脳会談、G7等においても、人権状況への深刻な懸念が共有されたところである。

 このような状況において、人権の尊重を掲げる我が国も、日本の人権外交を導く実質的かつ強固な政治レベルの文書を採択し、確固たる立場からの建設的なコミットメントが求められている。

 本院は、深刻な人権状況に象徴される力による現状の変更を国際社会に対する脅威と認識するとともに、深刻な人権状況について、国際社会が納得するような形で説明責任を果たすよう、強く求める。

(註: 当初案は、「本院は、深刻な人権侵害に象徴される力による現状の変更を国際社会に対する脅威と認識し、これを強く非難するとともに、深刻な人権侵害行為を国際法に基づき、国際社会が納得するような形で直ちに中止するよう、強く求める。」であった。しかしながら、「これを強く非難する」との文言や「国際法に基づき」という重要な表現が削除された上、「直ちに中止するよう、強く求める」が、「説明責任を果たすよう、強く求める」と、大幅に後退した表現に変更された。これでは、中国への非難ではなく要望である)


 政府においても、このような認識の下に、それぞれの民族等の文化・伝統・自治を尊重しつつ、自由・民主主義・法の支配といった基本的価値観を踏まえ、まず、この深刻な人権状況の全容を把握するため、事実関係に関する情報収集を行うべきである。それとともに、国際社会と連携して深刻な人権状況を監視し、救済するための包括的な施策を実施すべきである。

(註: 当初案は、「さらに、それぞれの民族等の文化・伝統・自治を尊重しつつ、自由・民主主義・法の支配といった基本的価値観を踏まえ、立法府の責任において、深刻な人権侵害を防止し、救済するために必要な法整備の検討に速やかに取り掛かる決意である」であった。「立法府の責任において」や「法整備の検討」が削除されたのであれば、そもそも国会決議としての意味が無くなるのではないか)


右決議する。

令和四年二月一日



 以上のように、決議案では、「中国」を名指しする事もなく、「非難」という言葉も使われなかった。これでは「中国非難決議」とは言えず、こうした「決議」自体に果たして意味があるのかという問題になってくる。

 完全に骨抜きにされた「決議」は、明らかに中国に対する「忖度」であり、自由主義諸国の人々の目には日本の「媚中外交」にしか映らないであろう。

 諸外国から、日本は「義」よりも「利」を選んだと思われても仕方がないし、政権与党の対応を見る限り、それが事実であろう。

 もともと今回の「中国非難決議」は、国際法で禁止されている「ジェノサイド(民族大量虐殺)」が、新疆ウイグル自治区において実行されている事実が西側メディアの潜入取材によって明らかになった事が最大の原因であったのであるが、「ジェノサイド」という最重要キーワードが「当初案」にさえ含まれていなかった事を鑑みれば、当初案作成の段階から中国への「忖度」があったとも見られる。

 一方、フランスの下院議会は1月20日、中国が新疆ウイグル自治区でジェノサイドを犯していると非難する決議を採択した。フランス下院の決議は、少数民族ウイグル族に対するジェノサイドをフランス政府が公式に認定し、非難するよう求めた。また同決議は、新疆ウイグル自治区において強制労働が行われ、拷問、性的虐待についても証言がある事を指摘した。さらに強制不妊政策でウイグル族の人口が抑制され、子供の連れ去りも横行していると批判している。そして、中国には「ウイグル族全体、またはその一部を抹殺しようとする意図がある」とし、ジェノサイドに相当すると明記している。

 人権先進国のフランスだけあって、フランス下院議会の中国非難決議の内容は的確であり、押さえるべきところはきちんと押さえている。

 議会における決議文のレベルで、その国の議員のレベルがよく分かる実例であると言えよう。

 少なくとも日本の政権与党には、中国の人権問題に本気で取組む意思は皆無である事が明らかになった。

 人権侵害の事実を、単なる伝聞や風説として片付けようとする姿勢で、果たして今後、如何なる取組みが出来るというのか。

 今回の国会決議は、昨年の日米首脳会談およびG7宣言に基づいたもので、国際的な約束履行の為に、日本の政権与党が止むを得ず決議した感が否めない。

 政権与党としては、あくまで形式だけ国会決議を行って、自由主義諸国と歩調を合わせたという事にして、この件は終了させる方針であろう。

 目先の参院選を前にして、自民党は、対米関係よりも公明党との関係を重視したという事である。



「ウクライナがNATO加盟なら核戦争も辞さず」


 2月4日、北京冬季五輪の開会式が北京市内で行われた。米国などの自由主義諸国は、政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」を実行した。

 これに対し、中国の習近平は同日、ロシアのプーチン大統領と中露首脳会談を開き、専制主義国家間の団結ぶりを誇示した。

 習近平は「中露は両国の根本的利益を守る努力を断固として支持する」と述べ、プーチンは「露中関係は前例の無いものになった」「友好と戦略的パートナーシップの下、2国間関係は発展し続けている」などと述べ、両首脳は蜜月ぶりをアピールした。

 中露首脳会談の共同声明では、ウクライナと台湾の問題をめぐり、ロシアの求める「NATOの不拡大」と、中国の求める「一つの中国」原則を、互いに支持する事を確認した。

 現在、十数万人のロシア軍がウクライナ国境に集結し、一方、中国軍も台湾海峡沿岸に集結しており、中露の二大専制主義国家によって今後引き起こされる世界規模での戦争の危機が懸念されている。

 今や世界は、「自由主義対専制主義」というイデオロギー対立の段階から、「自由主義諸国対専制主義諸国」の軍事的対決の段階へと移行しつつある。

 2月7日、ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領は、ウクライナ情勢を巡ってモスクワで会談した。会談後の共同記者会見でプーチンは、NATOがロシアを「敵国」と位置付けていると指摘し、ウクライナがNATOに加盟してクリミアの武力奪回を図るならば、NATO加盟の欧州諸国は「自動的にロシアとの軍事紛争に巻き込まれる」と警告した。さらにプーチンは、「ロシアは核保有国である。その戦争に勝者はいない」と述べ、核兵器使用の可能性を示唆した。

 ロシアにとってウクライナは絶対防衛圏であり、プーチンの立場としては決して譲歩出来ない問題である。

 今回のウクライナ危機は、60年前のキューバ危機と相似形を成している。1962年にソ連がキューバにミサイル基地を建設した際には、米国のケネディ大統領も核戦争を覚悟した経緯がある。

 その時と同じ事が、現在ウクライナで起きようとしているのである。

 ウクライナがNATOに加盟するということは、ロシアと国境を接する地域に、欧米製のミサイルシステムが設置される事を意味する。また、NATO軍がロシア国境まで迫る事になる。

 ウクライナ国境からモスクワまでは僅か400キロの距離である。これは、東京-大阪間の距離に相当し、モスクワは「西側」から手の届く距離になる。

 プーチンの危機感は、キューバ危機の際にケネディが抱いた危機感よりも遥かに深刻であろう。

 ウクライナが「敵」の手に渡れば、モスクワ陥落は時間の問題となる。

 80年前の独ソ戦においてスターリングラードを死守し、ドイツ軍を破ったロシア国民が、そのような事態を容認するはずがない。

 プーチンがここで西側に妥協するようであれば、プーチンの政治生命も終わるであろう。

 ウクライナがNATOに加盟する場合は核戦争も辞さず、とのプーチンの決意表明は決して脅しではない。

 現在、ウクライナは、東方のロシア国境、北方のベラルーシ国境、南部のクリミア半島の3方面から、ロシア軍に侵攻される危険性が高まっている。

 米国のシンクタンクによれば、ロシア軍がウクライナに侵攻した場合、侵攻開始から48時間以内にウクライナの首都キエフが陥落すると分析されている。

 2月3日、NATOのストルテンベルグ事務総長は、ロシア軍がベラルーシとの合同軍事演習の為、計3万人をベラルーシ国内に配備する予定である事を明らかにした。ウクライナの首都キエフは、ベラルーシ国境から僅か90キロの位置にある。

 ロシア軍がベラルーシ国境からウクライナに侵攻する場合、3万人のロシア軍だけという事はあり得ない。ロシアの盟邦であるベラルーシの正規軍も同時にウクライナに侵攻するはずである。

 さらに、ロシア側のウクライナ国境付近には十数万人のロシア軍がすでに集結している。これも同時に動くであろう。

 またネッド・プライス米国務省報道官は、「ロシアがウクライナに侵攻する口実として、ロシアの情報機関は、ウクライナによる先制攻撃の情報を捏造しようと企んでいる」事を明らかにした。ロシアが2014年にウクライナ南部クリミア半島を強制編入した際にも、同様の工作が実施されていた。



中国人科学者亡命を契機とした戦争の危機


 一方、中国の習近平は秋の党大会に向け、台湾をはじめとした東アジアでの「成果」を挙げる必要性に迫られている。

 台湾武力統一反対論を主張していた退役将校で著名戦略研究家の劉亜洲が、昨年12月に「失踪」した。台湾有事は秒読み段階に入ったものと見られる。

 現在、台湾の防空識別圏(ADIZ)には、中国軍機が頻繁に進入しており、1月24日には「殲16D」(電子作戦機)を含む13機が飛来した。これは海上の通信権、制空権を奪う作戦の鍵となる作戦機であり、具体的な侵攻の準備段階に入ったのではないか、という専門家の指摘もある。

 また沖縄県・尖閣諸島周辺にも、中国海警局の船が連日のように侵入し、2月4日には接続水域での航行が39日連続となった。

 こうした緊迫情勢の直前、極めて重大な事件が勃発していた。

 1月23日、英国のタブロイド紙デイリー・エクスプレス(Daily Express)は、中国人ロケット科学者が米国に亡命し、中国当局に衝撃が走っている事実を報道した。

 この亡命者は大物の科学者で、英国秘密情報部(MI6)が亡命の手助けをしたと報じられている。

 亡命した中国人は、国営企業である中国航空工業集団に所属し、中国が誇る極超音速滑空兵器「DF-ZF」の開発に重要な役割を果たした科学者だった。

「DF-ZF」は、弾頭として中距離弾道ミサイル「DF-17」に搭載され、マッハ5以上の高速で飛翔し、射程約1600~2400キロ)の目標を攻撃する極超音速滑空ミサイルになる。

 極超音速滑空ミサイルは、米中露などの主要国の間で熾烈な開発競争が行われているが、現在最先端の極超音速滑空ミサイルは中国の「DF-ZF」搭載の「DF-17」であり、これまで何度も実験され、すでに部隊配備されているとも言われている。

「DF-17」は、中国の固体燃料式・道路移動型・中距離弾道ミサイルである。これに「DF-ZF」が搭載されれば、軌道は低高度に抑制されるため、弾道ミサイル防衛(BMD)にとって、通常の再突入体よりも遥かに迎撃が困難になる。

 さらに今回亡命した中国人科学者は、他にも人工衛星の軌道を利用して敵国本土を攻撃する極超音速ミサイル運搬システム「部分軌道爆撃システム(FOBS:Fractional Orbital Bombardment System)」の開発にも関わったという。

 FOBSは、発射したミサイルを一度衛星軌道に乗せ、地球を一回りする前に飛翔体を降下させ、目標に突入させるもので、「衛星爆弾」とも呼ばれる。衛星爆弾には核兵器を搭載する事も可能である。

 FOBSは、米国のミサイル防衛の弱点を突くシステムであり、弾道ミサイルよりも対処が困難とされている。

 FOBSは、旧ソ連が1960年代に開発したが、1979年に調印された米ソ間の第2次戦略兵器制限交渉(SALTⅡ)で禁止されたものである。

 中国は2021年8月、FOBSらしき新型兵器の実験を行った。

 中国から南に向けてミサイルを打ち上げ、大気圏から宇宙に入り、気象衛星と同じように、南極・北極を回る「極軌道」で地球を一周し、再び中国上空に戻ると、そこから飛翔体を発射し、砂漠の目標近くに着弾させた。

 2021年11月16日に公開された米テレビ局CBSによるインタビューで、ジョン・ハイテン米国統合参謀本部副議長は、「中国のミサイルは地球を一周し、そこから切り離された飛翔体は、中国国内の砂漠に設営された目標から40キロ離れた地点に着弾した」と話している。これは中国が2021年8月に実施した実験について述べたものである。

 これにより、中国は地球全域に対して核攻撃する能力を持つ事が明らかになった。

 しかもこの「衛星爆弾」は、軌道上の人工衛星から最短距離で直接、敵国本土を核攻撃する事が可能である。

 因みに、現在の米国の弾道ミサイル防衛(BMD)システムは、全て北極回りの弾道ミサイルに備えたシステムとして構築されている。

 しかしFOBSは、南極周りの地球周回軌道を利用して核攻撃が可能である。これに対応出来る防衛システムは、米国に存在しない。

 中国がこれだけの技術と装備を整えている事実を鑑みれば、中国は明らかに核戦争を視野に入れた戦争準備を推進していることになる。

 万一、米中の全面核戦争が発生した場合、現時点では米国に勝ち目は無い。

 極超音速滑空ミサイルやFOBS(衛星爆弾)で攻撃されたならば、どんなミサイル迎撃システムも無効化され、イージス・システムでも迎撃不可能とされている。

 従って日本政府は、すでに時代遅れで全く役に立たないイージス艦やイージスアショア等を、米国から超高額な価格で買い込んでいることになる。国民の血税が「死に金」にされているのである。

 それはさておき、今回の中国人科学者の亡命が、中国当局を如何に震撼させたかは想像に難くない。

 これまで米中露を始めとして多くの国々が最先端兵器開発の焦点としてきた極超音速滑空兵器や衛星爆弾について、中国の最先端技術がことごとく米国に流出することになる。

 米国や英国は、亡命科学者からもたらされた情報を元に、中国から遅れをとっていた極超音速滑空兵器や衛星爆弾の開発を加速することが可能となる。

 一方、今回の中国人科学者亡命事件が、習近平の「戦争計画」を大幅に前倒しさせる可能性は十分あり得ることである。

 今後2年もあれば、亡命科学者の情報に基づいて、中国の技術レベルを超える極超音速滑空ミサイルやFOBS(衛星爆弾)を、米国や英国が開発・配備する事が可能であろう。

 そうなってしまうと、中国のこれまでの苦労が水の泡である。

 そこで、中国が米英よりも優位にある間に、習近平が核戦争を決意したとしても不思議ではない。

 因みにこれまでの世界には、「核戦争を希望する大国は地球上に存在しない」という暗黙の了解があった。

 この事は米ソ対立の冷戦時代においても同様であった。キューバ危機の際には、全面核戦争を回避する為に、米国のケネディもソ連のフルシチョフも、最終的には双方が面子を捨てて妥協の道を選んだのだった。

 しかしながら、習近平は全く異なる価値観の人間である。

 習近平が最も崇拝している毛沢東は、西側諸国を倒す為には全面核戦争をも断行すべきという思想の持主であった。

 1957年11月に毛沢東がソ連で開かれた社会主義陣営の各国首脳会議に参加した際に、毛沢東は会議上、当時のソ連のフルシチョフが提唱する「西側との平和的共存論」に激しく反発して次のように主張した。

「我々は西側諸国と話合いをすることは何も無い。武力を以て彼等を打ち破れば良いのだ。核戦争になっても別に構わない。世界には27億人がいる。半分が死んでも後の半分が残る。中国の人口は6億だが半分が消えてもなお3億がいる。我々は一体何を恐れるのだろうか」

 毛沢東のこの会議での演説は「核戦争演説」とも言われており、7年後の1964年10月に中国は核実験に成功した。

 毛沢東信者の習近平は、当然毛沢東の「核戦争演説」を踏襲するであろうし、毛沢東の教義を実践する意欲に燃えているはずである。

 しかも1957年当時と違って、2022年の世界の人口は70億を超え、中国には14億人がいる。仮に世界の人間の半分が死んでも35億人が残り、中国人は7億人が残ることになる。しかもその数は、1957年時点の人口よりも多いのである。

 それこそ習近平にとっては、「我々は一体何を恐れるのだろうか」という事になる。

 習近平は、「米国との核戦争も辞さぬ」という覚悟を抱いている。少なくとも我々は、そういう前提で対応しなければならない。



東西で連動するウクライナ侵攻と台湾有事


「ウクライナ侵攻」と「台湾有事」は連動すると予想する専門家は多い。

 今やロシアも中国も、核戦争を辞さない覚悟を以て、「侵略」を準備している状況にある。

 こうした中にあっても、米国のバイデン大統領は、経済制裁以上のプランを考えていない。

 事実、現在の米軍には、ウクライナと台湾に同時対応を出来るだけの余力は無い。米軍の現有規模からすれば、対露・対中の二正面作戦は不可能である。

 しかも米国は、ウクライナや台湾との間に同盟を結んでいるわけではない。

 確かに米国は、以前からウクライナにも台湾にも大量の武器を供与し続けているが、米国民の血を流してまでウクライナや台湾の為に戦う義理は無い。

 ロシアも中国も、そうした事情を見越した上で、それぞれウクライナと台湾に侵攻を予定しているのである。

 米国をはじめ西側諸国による中露に対する経済制裁は厳しいものになるだろうが、ロシアも中国もそうした事は承知の上であろう。

 ロシアとしては、たとえロシア経済が低迷しても、ウクライナが西側陣営に転じる事だけは防がなければならない。ロシアは、中国の豊かな経済と緊密な関係を保ちさえすれば、西側を相手にしなくても経済的にやっていけると考えているはずである。

 また中国も、西側諸国の経済制裁など気にも留めないであろう。

 そもそも毛沢東主義者で文化大革命を理想とする習近平にとっては、鄧小平以来の「改革開放」路線などは、本来打倒すべき反動的で反革命的なブルジョア路線だったのである。

 もし中国が、米国をはじめ西側諸国から経済制裁された場合は、習近平は、一帯一路の傘下の国々と共に、西側から完全に独立したブロック経済を構築するであろう。これにロシアを含めれば、世界を二分する勢力となり得る。

 毛沢東主義者の習近平としては、毛沢東が唱えた「自力更生」を実践するだけである。

 一方、米国が経済制裁だけで対応した場合、宥和政策による弱腰外交が世界中から非難され、米国は国際的求心力を失い、西側勢力は分裂し衰退する。

 かくして世界史は新たな専制主義の時代へと移行する、という悪夢の世界が到来するかも知れない。

 こうした最悪の事態を防ぐには、如何なる事があろうとも、我が国や米国をはじめとする自由主義諸国は一致協力して専制主義国家に対峙する必要がある。

 最早「国益」の問題ではない。「自由主義の世界」か「専制主義の世界」か、人類の選択の問題なのである。













《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
東京都千代田区永田町2-9-6
十全ビル 306号
TEL: 03-5501-3413