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「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













難民対策で問われる日本の国際的信用


昨日の香港、今日の台湾、明日の日本


[2021.6.1]




台湾独立を主張するデモ行進 (台北市)
PHOTO(C)AFP


「出入国管理法改正案」の問題点


 5月18日、政府与党は外国人の収容や送還のルールを見直す「出入国管理法改正案」について、今国会での成立を断念した。

 政府が提出した「出入国管理法改正案」は、難民認定申請が却下された外国人の長期収容が問題となる中、難民の本国送還を容易にし、入管当局の権限を強化する目的の改正案であった。

 現行の入管法では、難民認定手続き中の外国人は、申請の回数や理由等を問わず、日本から退去させることが出来ない。そこで「改正案」では、難民認定手続きが3回申請されても却下された場合には本国へ強制送還するものとした。

 日本政府は、「改正案」は難民の長期収容に対処する為のものと説明しているが、明らかに国際的な規範に反するものであった。

 先ず我が国は「国連難民条約」の批准国である(1981年批准)。

 国連難民条約の中で最も重要なのは、第33条の「追放及び送還の禁止」の規定である。

 この規定は、迫害される可能性のある国に再び追放されたり送還されたりする事が無いように難民は保護されなければならない、という「ノン・ルフールマン原則」に基づくものである。

 第二次大戦中、ナチス・ドイツによる大量虐殺から逃れてきたユダヤ難民に対し、多くの国々が受け入れを拒否した事や、また戦後、ソビエト連邦から脱出した何百万人もの難民や強制収容所の囚人達が本国へ送還させられた後、ソ連当局により粛清された事があり、これらの反省から、ノン・ルフールマン原則が成立した。

 当初このノン・ルフールマン原則は、国家が自らの国境とその中に住む国民を管理する権利を侵害する為、国家主権とは本質的に相容れないものとされていた。

 しかしながら、1960年代に欧州人権委員会(ECHR)によって、ノン・ルフールマン原則は国際法上の「強行規範(ユス・コーゲンス)」と認定され、「追放と強制送還の禁止」が国際法上の絶対原則とされるようになった。

 さらに80年代には、欧州人権委員会は「国家主権の維持よりも送還され得る個人の保護が優先される」と判断するようになった。

 従って現在の国際法基準においては、難民が保護を求めてきた場合、「難民条約」締結国はこれを無条件に保護する義務があるとされている。

 もし難民を受け入れないというのであれば、国連難民条約から脱退すべきということになる。

 なお、「難民」は「移民」とは全く異なる概念である。

「難民」とは、「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れた人々」と国連難民条約で定義されている。

 一方、「移民」は移住の理由や法的地位に関係なく、自らの意志で定住国を変更した人々のことで、差し迫った迫害の危険があるわけではない。また「移民」受け入れの是非は各国の政策判断である為、「不法移民の送還」は国際法上の問題にはならない。

 因みに我が国は、「難民」の認定基準が異常に厳しいとして諸外国から非難されている。

 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、2018年、1万9514人の外国人が日本に難民申請を行ったが、条約上の難民として認定されたのは42人で、認定率は0.22%だった。

 同年の米国では30万9083人の難民申請者に対し認定された難民が3万5198人(認定率 11.4%)、英国は5万2575人に対し1万2027人(認定率 22.9%)、ドイツは31万9104人に対して5万6583人(認定率 17.7%)、フランスは18万2267人に対し2万9035人(認定率 15.9%)だった事を考え合わせると、我が国は国際法上の義務をほとんど果たしていない国ということになる。

 日本政府から難民申請を却下された外国人達は、そのまま「不法滞在者」として法務省の入管施設に収容されることになる。だがその施設の環境が劣悪で、2007年以降17人の外国人が収容施設で死亡している。また長期収容者も多く、国連や国際人権団体などからも問題視されてきた。 最近では、収容施設での新型コロナウイルスの集団感染も発生しているという。

 現行の入管法の下では、難民申請者が何度申請を却下されても、申請を繰り返している間は本国への強制送還が出来ないことになっている。

 そのため、難民として認定されなかった外国人達がそのまま不法滞在者として国内に残ってしまう事になり、結果的に入管の収容施設に収容されている不法滞在者の数が3000人を越える事態になっているのが現状である。

 そこで法務省は、今よりも容易に強制送還が可能になる制度へと変えようとした。

 法務省立案による「改正案」では、難民申請を3回却下された外国人については強制送還が可能になるとしている。

 しかしながら、その「改正案」の方向性は、現在の国際基準に照らせば完全に逸脱した物になった。

 現行制度のように、難民申請が何度却下されても「長期滞在」が可能な「抜け道」が用意されているのは、国際法上の強行規範である「ノン・ルフールマン原則」に反しない形で、変則的であっても日本政府が難民を「保護」しようとしている姿勢の表れでもあった。

 それを、「収容施設が不足しているから」あるいは「不法滞在者が増加しているから」などといった理由で、難民認定申請者を本国に強制送還するならば、我が国は「難民」の生命を危険に晒す国家であると公言するに等しい行為になる。

 もしそうなれば、国際社会において日本の人権意識に対する信頼が根本から失われ、我が国は中国などと同様の「反人権国家」のカテゴリーに括られる事になるだろう。

 今回の「出入国管理法改正案」は、国際法の原則や強行規範について理解の足りない法務省官僚が、自分勝手な都合で「改正案」を作成したものと思われるが、その事がもたらす悪影響の甚大さを、与党政治家達はもっと自覚すべきである。

 そもそも難民申請者の収容施設が不足しているのであれば、収容施設を増やす方向で予算要求をするべきであり、収容施設の環境が劣悪なのであれば、改善方法を検討するべきケースであった。収容者を減らす為に難民申請者を強制送還できるような制度に変更するなどは、全くの筋違いであり、我が国の国際的評価を地に落とすような行為であった。

 現代の国際社会のルールの基本は「人権」である。

 グローバル化した現代世界においては、国際基準こそが絶対である。我が国は、決して中国のような国になってはならない。

 因みに、一昨年「香港国家安全法」が施行された香港の「難民」については、1997年まで統治していた英国が全面的に受け入れを実施しており、自由を求める数多くの香港市民達が続々と英国への移住を開始している。

 英国は、植民地時代の当時の行為はともかく、現在においては立派に道義的責任を果たしていると言えよう。

 日本政府も、少しは英国政府の姿勢に学ぶ必要があるのではないか。

 また入管行政の根本的な問題として、入国管理に関わる裁量が入国管理局に一手に握られ、裁判所を含めた外部からのチェックが全く入らない仕組みになっている事も大きな問題である。外部からチェックを受けない入国管理局内では、多くの難民を認定する審査官よりも、厳しい審査を行って申請を却下する審査官の方がより評価されるという。

 こうした体質にも抜本的な改革が求められる。

 なぜならば近い将来に、台湾から正真正銘の「難民」が大量に我が国に入国して来る事が予想されるからである。

 米軍インド太平洋軍司令官のフィル・デービッドソン海軍大将は、3月に開かれた連邦議会の公聴会において、中国が2027年までに台湾に侵攻するかも知れないとの懸念を表明した。

 仮に台湾全島が中国共産党に占領されるという事になれば、数百万単位の難民が発生する可能性がある。人口2400万人の台湾から1割の難民が発生しても、その数は240万人にも上ることになる。

 台湾有事の際に、日本が台湾からの「難民」を受け容れるべきなのは、単にかつての統治国だったからという理由だけではない。次に述べるように、日本と台湾とは運命共同体であり、「今日の台湾は明日の日本」だからである。



台湾問題は日本にとって他人事ではない


 台湾国防部によると、中国軍機による台湾の防空識別圏(ADIZ)への侵入は、今年1月から4月の間に283回に上り、4月だけでも107回を数えるという。

 とりわけ中国軍機による台湾ADIZ侵入は、台湾とフィリピンの間のバシー海峡上空に集中している。これは、米海軍の潜水艦が西太平洋から南シナ海に侵入する際にバシー海峡を通過する為、中国側はその方面への哨戒目的で頻繁に対潜哨戒機を飛行させているのである。

 それに加え、最近ではH6Kミサイル爆撃機や戦闘攻撃機による台湾ADIZ侵入回数が増加しているという。最早これらは単なる牽制ではなく、実戦を想定した行動と考えられる。

 中国海軍はここ5年間で主要な艦艇と潜水艦を計90隻進水させている。これは、西太平洋で米国が有する艦艇の約5倍近くに当たる。

 また、中国は最新式の戦闘機を年間に100機以上製造し続けている。

 現在の中国空軍は、1150機の戦闘機と170機の爆撃機を保有しており、中国海軍の264機の戦闘機と80機の爆撃機と合わせれば、すでに米太平洋艦隊の航空機の数を上回っている。

 さらに中国は宇宙兵器も配備しており、台湾やその近海に浮かぶ米海軍の艦艇、さらには日本、韓国、グアムにある米軍基地に対して攻撃可能なミサイルも数多く保有している。

 いざ台湾有事となれば、東アジア全域の制空権は瞬く間に中国が制することになり、中国軍が戦争の主導権を握るであろう。

 これに米軍が対抗しようとすれば、局地戦ではなく、国家の総力を挙げた全面戦争を決意しなければならなくなる。

 オバマ政権時代から「世界の警察官」を辞めたがっている米国に、果たしてそこまでの覚悟があるだろうか。

 2014年にロシアがクリミアを軍事占領した際にも、米国のオバマ政権は静観を決め込んだ。

 そして現在のホワイトハウスには、オバマ政権の副大統領であったバイデン氏をはじめ、当時のスタッフが勢揃いである。

 かねてより危惧されていたとおり、バイデン政権の外交姿勢が徐々に中国に対して融和的になってきた。

 バイデン政権の大統領副補佐官(国家安全保障担当)でインド太平洋調整官のカート・キャンベル氏は、5月4日、「ウォール・ストリート・ジャーナル」主催のシンポジウムにおいて、
「万が一にも中国が台湾を軍事攻撃した場合、アメリカが中国と干戈を交えてでも台湾を防衛するか否かに関して、バイデン政権が明確な立場を示すことは差し控えるべきである。そのような行動は、アメリカの国益を深刻に損なうからだ」
と述べている。

 キャンベル副補佐官は、バイデン政権の対中・対アジア政策立案の中枢にいる人物であるが、オバマ政権時代には南シナ海問題を巡って中国に妥協的な政策をとった張本人とされる人物である。十年前に南シナ海を中国に明け渡し、今度は台湾をも見捨てようという人物が、バイデン政権で重要なポストに就いているのである。

 米国は、台湾の防衛を条約で義務付けられているわけではない。

 しかしながら、もし中国が台湾を軍事侵略した場合には、世界中が米国の対応を注視することになる。

 そして、中国が台湾を軍事占領しても米国が動かなかった場合、それはパックス・アメリカーナ(米国による平和)の終焉を意味し、世界中の同盟国が最早米国には頼れないと認識する事になるだろう。

 台湾が中国に占領されたならば、中国海軍は自由に太平洋に出られるようになる。必然的に、中国海軍は西太平洋に展開し、日本列島を四方から完全包囲することが可能となる。

 その場合、日本のシーレーンが脅かされるだけでなく、国家としての存立そのものが危機的状況となる。

 日本を守る為には、台湾という強力な防波堤の存在が絶対に必要であり、日本と台湾とは紛れもなく「運命共同体」なのである。

 台湾が中国に併合されたならば、日本は確実に存立危機事態に陥るだろう。

 我が国にとって、台湾問題とは決して他人事ではない。



「台湾は中国の一部」説は中国共産党の捏造


 台湾は半導体産業の中心地である。とりわけ、半導体メーカーとしては世界最大の企業価値を誇り、最先端の半導体で84%のシェアを占めている台湾積体電路製造(TSMC)は、世界的企業である。

 TSMCは、1987年に張忠謀(モリス・チャン)が台湾で創業し、2002年には半導体生産トップ10、2014年には半導体売上3位に入り、全世界の半導体チップ製造量の半分を超え、世界最大の半導体製造企業となった。顧客企業にはクアルコム、AMD、NVIDIA、アップル、ファーウェイなど数百社に上る。

 TSMCの技術力は非常に進んでおり、中国が簡単には真似の出来ないレベルに達している。

 このTSMCで生産が停止するようなことがあれば、日本のみならず世界中の電子産業が打撃を受け、大きな損失が生じる。

 日本にとって台湾は、地政学的な面だけでなく、経済分野においても運命共同体なのである。

 本来ならば、中国などに気兼ねすることなく、台湾を一つの「独立国家」として、我が国が協力支援出来るようになる事が望ましい姿であろう。

 今や台湾の多くの人々も、中国からの分離を強調する政権を選ぶようになっている。

 台湾の国立政治大学が2020年に実施した世論調査によると、台湾に住む人の67%が「自分は中国人ではなく台湾人」と認識し、「自分は台湾人ではなく中国人」と思っている人は僅か2.4%に過ぎない。また、中国との関係については、独立志向が35.1%、現状維持が52.3%、統一志向が5.8%である。

 中国国防省の呉謙報道官は、今年1月28日の記者会見で、「台湾独立を目指す勢力に本気で告げる。火遊びをする者はやけどを負う。台湾独立は戦争を意味する」などと述べ、台湾独立の動きに対し、中国共産党が異常な程の警戒をしている姿を露呈した。

 裏を返せば、台湾独立は中国共産党にとってのアキレス腱でもあると言える。

 ここで、台湾の歴史を簡単に振り返ってみよう。

 台湾が中国の史書に初めて登場するのは隋の時代である。610年、隋が「流求国」を討ったと言う記録が残っているが、この「流求国」が台湾の事だと言われている。

 台湾が史書に再び登場したのは、大航海時代の1544年であり、ポルトガル船によって台湾は発見された。

 当時の台湾は、大多数のマレー・ポリネシア系諸部族と大陸から移住してきた中国人(主に大陸から逃れてきた犯罪者等)が住んでいたが、台湾全島を統一するような政権が成立せず、それが災いして、ヨーロッパ勢力に支配されることになった。

 1624年のオランダ艦隊による台湾南部への上陸、1626年のスペイン艦隊による台湾北部への上陸によって、台湾南部をオランダが、北部をスペインが分割支配する事になった。

 その後、北部を支配していたスペインが撤退し、オランダによる台湾全島支配が完成すると、従来以上の過酷な植民地支配に住民は苦しめられた。

 一方、中国大陸においては、満州を起源とする清朝の中原支配により、南下を余儀なくされた明王朝が1644年に最後の皇帝崇禎帝の自決によって滅亡した。その後、明王室に連なる王子らによって「南明」と呼ばれる地方政権が維持されるが、これも1661年に清朝によって滅ぼされた。

 その際、「南明」政権側で戦っていた海賊の頭目・鄭成功が、大陸の拠点から撤退し、台湾に拠点を置いて清朝に対抗してゆく事を決断した。

「南明」が滅亡した1661年、鄭成功は手勢を率いてオランダが支配していた台湾に侵攻し、圧政に苦しめられていた住民達の支持を得て、翌年オランダ軍を降伏させ、ヨーロッパ勢力による台湾支配に終止符を打った。

 その後、台湾は鄭成功から三代にわたり鄭氏の統治が続いたが、1683年清朝に降伏する。

 このように、明王朝は台湾を領有しなかったし、台湾からオランダを追い出して成立した鄭氏政権は海賊が作った国であって、中国の政権ではない。

 鄭氏政権の降伏によって清朝が台湾を領有することになったが、そもそも清朝は満州が中国を征服して建てた国なので、中国が台湾を領有したのではなく、正確に言えば「満州が台湾を領有した」のである。

 しかも清朝は台湾に対しては「化外の地」として消極的関与を続けた為、台湾は近代に至るまでほとんど放置状態にあった。

 転機となったのが日清戦争で、1895年の下関条約により台湾は清朝から日本に割譲された。

 その後、日本は50年間にわたり台湾の近代化を推進したが、1945年の終戦の際に台湾を放棄した。

 そして1949年に、中国大陸での国共内戦に敗れた蒋介石の国民党軍が、台湾に進駐し支配する事になった。

 以上のように、中国が台湾を「領有」した歴史事実は一切存在しない。

「台湾は中国の一部」という言説、あるいは「一つの中国」原則は、いずれも毛沢東の中国共産党が、国共内戦後に台湾に立て籠もった蒋介石の国民党政権を「非合法化」する目的でデッチ上げた虚構(フィクション)であった。

 従って、中国による台湾「領有権」の主張は、全く不当なものである。

 これまで中国共産党は、「台湾は中国の一部」であるから、自分達には台湾との統一を実現する義務があるなどと主張し、世界各国の政府にもそれらのフィクションを信じさせようとしてきた。そして数十年にわたるその試みは、ほぼ成功してきた。

 かくして、米国をはじめ世界中の国々が、たとえ表面上と謂えども「一つの中国」原則を受け容れる事を余儀なくされてきたのが実情である。

 そうする事により、中国が台湾に対して軍事力を行使したり武力占領したとしても、「これはあくまで内政問題だから」と対外的に主張が出来るようになった。

 事実、満州・内モンゴル・チベット・新疆ウイグルも、実際には中国が領有した歴史は存在しないのであるが、中国共産党の歴史捏造によって、中国軍による軍事占領が悉く正当化されてきたのである。

 逆に、中国当局が諸外国に対し強弁し続けてきた「一つの中国」原則そのものが全く根拠なき虚構であった事が明らかにされるならば、国際社会の台湾に対する支援の在り方も変化するであろう。

「台湾は中国の一部」という説が捏造であり、歴史的事実に反している以上、「台湾独立」こそが必然であり、必ずや実現されるべき事なのである。











《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
東京都千代田区永田町2-9-6
十全ビル 306号
TEL: 03-5501-3413