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「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













毛沢東主義の本格的再現を目指す習近平


大躍進政策や文化大革命の悪夢再び


[2020.7.15]




文化大革命で中国共産党に処刑される満州人(ハルピン郊外)



「人権」の名に値しない国連人権理事会


 6月30日、スイスのジュネーブで第44回国連人権理事会が開催され、香港国家安全維持法に対する審議が行われた。

 香港国家安全維持法に反対した国は、日本をはじめ、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、アイルランド、ドイツ、マーシャル諸島、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、パラオ、スウェーデン、スイス、イギリスなど27カ国だった。

 一方、香港国家安全維持法に賛成した国は、中国をはじめ、バーレーン、ベラルーシ、カンボジア、カメルーン、中央アフリカ、キューバ、ドミニカ、エジプト、赤道ギニア、イラン、イラク、クウェート、ラオス、モーリタニア、モロッコ、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、北朝鮮、オマーン、パキスタン、パプアニューギニア、サウジアラビア、ソマリア、スリランカ、スーダン、シリア、UAE、ベネズエラ、ザンビア、ジンバブエなど53カ国だった。

 因みに米国は、「最も深刻な人権侵害国(=中国)が理事国になっている」として、2018年6月に国連人権理事会から脱退している。

 では何故、53カ国もの国々が「賛成」に回ったのだろうか。

 中国に賛同した52カ国には、カンボジア、カメルーン、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ラオス、パプアニューギニア、スリランカ、ザンビア、ジンバブエ等々、「一帯一路」絡みで中国から多額の資金援助を受けている国が多い。

 とりわけ発展途上国の場合、国内のインフラ整備や近代化を推進する為に多額の融資が必要不可欠であり、止むを得ず中国支持に回らなければならない国も多い。中には、対中債務が膨張して返済不能に陥り、「債務奴隷」状態の国もある。

 さらに「賛成」国が多い理由としては、アフリカや中南米の諸国の場合は、そもそも香港問題への興味や関心が薄く、一体何が問題であるのかさえ理解していないという事情もある。

「香港国家安全維持法は人権問題ではないので、国連人権理事会で議論すべき問題ではない」などと発言したキューバ代表に見られるように、国連人権理事会の採決結果は、各国代表団の無知と無関心によってもたらされた産物であった事が分かる。

 また中国と同様、国内の反政府活動に手を焼いている国々が少なからず存在するのが、「賛成」国が多い理由でもある。

 エジプトやイラン、パキスタン、シリア、サウジアラビアなどは、イスラム過激派などの問題を抱えている。こうした国々では、いずれも体制を維持する為に、市民への監視を強化し、反政府組織には厳しい対応をとっている。

 2019年7月にも、今回と同様、国連人権理事会の加盟国である英国や日本など22カ国が、新疆ウイグル自治区における人権侵害について中国を非難する共同書簡を提出したが、ロシアや北朝鮮、パキスタン、シリア、アルジェリア、サウジアラビアやエジプトなど37カ国が中国を擁護する立場を表明した。

 最早、中国に乗っ取られた国連人権理事会などを相手にする必要はない。その点で、一昨年の米国の脱退は正しい決断であったと言える。

 米国では今月上旬、香港の自治の侵害に関わった中国当局者などに対して制裁を科す「香港自治法」が成立した。

 また英国は、最大300万人の香港市民に対し、英国での定住と英市民権を申請する機会を与える方針を打ち出した。

 オーストラリアも、香港市民に安全な避難先を提供することを積極的に検討しており、モリソン首相は、間もなく内閣で検討される具体案が複数存在する事を明らかにした。

 たとえ国連が中国共産党の下僕と化したとしても、我が国はあくまでも自由主義陣営の一員として筋を通さなければならないだろう。


≪関連リンク≫
 中国に乗っ取られた国連人権理事会



毛沢東主義に回帰する中国


 一連の香港問題は、中国共産党の約半世紀ぶりの路線変更に根本原因がある。

 先月、中国共産党対外連絡部の元副部長・周力氏が「中国社会科学報」に掲載した論文が、現在中国で話題を呼んでいる。

「悪化した外部環境への六大準備を積極的に行う」と題した周力論文は、従来の中国共産党や中国政府の公式見解とは大きく異なり、国家の主要政策を根底から問い直す過激な内容となっている。

 周力氏が提唱する「六大準備」とは、
「対米関係悪化の加速に備え、闘争レベルが全ての面で上がる事態に備えよ」
「外部の需要の萎縮に対応し、サプライチェーン断裂への準備を怠るな」
「新型コロナウイルス感染症の常態化、ウイルスと人類の長期的な共存に備えよ」
「米ドルの覇権から脱するため、一歩一歩、人民元と米ドルのデカップリングを実現する準備をせよ」
「地球規模の食糧危機の爆発に備えよ」
「国際的なテロ勢力の復活に備えよ」
というものである。

 当該論文では、「国際組織による今年の世界経済成長予想はマイナス4.9パーセント程度に下方修正され、1930年代の世界恐慌以来、最もひどい経済衰退が進む。我が中国の輸出企業の受注は大きく減り、企業の生産は停滞し、国際的な物流は滞る。原料が供給されず、製品は運び出せない現象が激増し、我々の安定的な成長や雇用確保に巨大な圧力になる」と、極めて厳しい中国経済の状況が分析されており、また、世界的な食糧危機の到来や食品価格高騰にも言及されている。

 そうした「悪化した外部環境」の中、周力氏は、かつて毛沢東が唱えた「自力更生」路線への転換の必要性を訴えている。

 政治・経済・軍事のあらゆる方面で米国と対決し、「米中経済の断絶は不可逆的である」として、米ドルと人民元とのデカップリング(切り離し)を実現し、国際社会に依存せず、中国独自の道を進むべし、というのがその主張である。

 実は、これこそが習近平の目指す毛沢東主義に基づく政治に他ならない。

 論文筆者の周力氏は、かつて閣僚級に相当する立場にいた元高級官僚であり、外交政策の「核心人物」の一人とされており、当該論文の内容は、習近平国家主席の意を汲んだものと見られている。

 習近平は最近、「底線思惟(ボトムライン思考)」という表現で、対米全面衝突を含む最悪の事態に備えるよう号令を発してきた。

 今回の周力論文を契機に、今後の中国ではかつての「大躍進政策」や「文化大革命」を彷彿とさせる大改革と粛清が人民総動員で展開される事が予想される。

 こうした事は、半世紀前、毛沢東の知遇を得ていた小役人の姚文元が書いた「新編歴史劇『海瑞罷官』を評す」と題した論評が、1965年11月10日に上海の新聞に掲載された事を契機に、その後10年間に及ぶ文化大革命に発展した歴史を想起させるものである。

 習近平にとっては、あくまで「経済」よりも「政治」が重要であり、経済成長や人民の生活向上よりも、「党が全てを決定する」という共産党独裁の原則が優先するのである。

 現在の米中対立の激化と武漢ウイルスの蔓延は、これまでの中国の発展モデルを根底から覆し、中国に抜本的な政策変更を余儀なくさせた。

 今後、サプライチェーンの分断が進めば、「中国製造2025」や5G戦略をはじめ、中国共産党がこれまで思い描いてきた様々な将来設計が崩れ去ってしまうことになる。

 また、中国は80年代以降の工業化に伴って食糧自給率を減少させてきた為、中国の大豆輸入量は世界最大である。

 14億の人口を抱える中国の食糧供給は、グローバル経済が機能する良好な国際環境の上に成立してきたものであり、米中対立による中国の孤立化は、中国全土に食糧難と飢餓状態をもたらすだろう。

 しかしながら、半世紀以上前に4千万人の餓死者を出しても怯むことなく突き進んだ毛沢東主義こそが、習近平の理想とする政治なのである。

 今や、中国全土に隈なく張り巡らされた情報監視網と、党への異論を一切許さない法制度によって「収容所国家」と化した中国において、本格的に「大躍進政策」や「文化大革命」が再現されようとしている。しかも今回は、中国国内のみならず、全世界を巻き込む事になるであろう。

 因みに周力論文の最後では、「国際的なテロ勢力の復活に備えよ」などと提唱されているが、客観的にデータを見るならば、中国共産党こそが人類史上最大かつ最悪のテロ組織であることは明らかなのである。











《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
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TEL: 03-5501-3413