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「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













香港を「第二の天安門」にしてはならない


天安門事件31周年を前に


[2020.5.27]




香港国家安全法案に抗議する香港市民 (5月24日)
PHOTO(C)REUTERS
 市民デモに向けて放水する香港警察 (5月24日)
PHOTO(C)EPA



香港の完全制圧に乗り出した中国


 世界各国がコロナウイルス対応に追われている機に乗じて、中国政府は本格的な香港支配に乗り出した。

 5月22日、全国人民代表大会(全人代)が北京の人民大会堂で開幕し、中国政府による香港の統制強化を定めた「香港国家安全法案」が審議入りしている。

 これは、国家分裂や政権転覆を企む事を禁じる法案であり、昨年香港市民のデモによって廃案になった「逃亡犯条例改正案」に代わって、中国共産党による香港独裁支配を可能にする立法である。

 この香港国家安全法が成立すれば、言論や集会の自由は失われ、「法による支配」から「党による支配」へと移行することになる。

 また、1984年の中英共同宣言で定められた「一国二制度」や「高度な自治」も、「国家分裂」を助長すると解釈されれば全て「違法」ということになる。

 本来、香港と中国との関係においては、「一国二制度」に基づいて、2047年までは、香港の法律は香港の立法会で議論されて成立することになっており、香港では中国本土の法律は適用されないという原則がある。

 しかしながら今回、中国当局は、香港の憲法に相当する「香港基本法」第18条の例外規定を利用して、中国が香港の立法会を通さず、「香港基本法」に「国家安全法」を組み込む形で、中国による香港の実質支配を実現しようとしているのである。

 この事は、すでに中国共産党が香港の立法会を見限った事を意味している。

 香港の重要な法案については、抗議デモによって昨年来機能不全に陥っている香港立法会にかけるよりも、全人代で決めた方が手っ取り早いということである。

 これが既成事実化すれば、今後、香港の法律は中国が一方的に全人代において直接立法することが慣例となり、「一国二制度」は終焉し、香港の自治は事実上消滅する。

 因みに、香港国家安全法案の内容には、「国家安全法の執行機関」を香港に設立できるという条項も含まれている。

 最早、中国共産党にとっては、香港立法会のみならず、香港行政府すら不要ということである。

 香港統治に失敗した林鄭月娥行政長官に業を煮やした中国共産党は、「国家安全法の執行機関」を通じて、いよいよ香港を直接支配しようとしているのである。

 かくして中国共産党は、27年の前倒しで「一国二制度」を廃止し、香港における中国共産党独裁体制を確立しつつある。

 中国によるこれら急速な動きは、如何に習近平が焦っているかという事の裏返しでもある。

 昨年11月の香港区議会議員選挙における民主派勢力の圧倒的勝利に強い危機感を抱いていた習近平は、本年9月予定の香港立法会選挙を控え、いよいよ本格的に香港民主化運動の撲滅に乗り出した。

 5月の全人代開幕に先立ち、去る4月18日、香港警察は民主派主要メンバーを一斉摘発した。明らかに当局による計画的な予防拘束である。

 逮捕されたのは、「民主の父」と呼ばれる李柱銘(マーティン・リー)元立法会議員をはじめ、現職の立法会議員・梁耀忠氏、民主メディア「蘋果日報(アップル・デーリー)」の創設者・黎智英(ジミー・ライ)氏など15人である。

 この民主派幹部一斉逮捕は、昨年6月に民主派諸勢力による反政府デモが本格化して以降、最大規模である。

 こうした民主活動家達の身柄拘束は、5月開幕の全人代で「香港国家安全法」を無事に成立させる為の準備工作であったと見られる。

 4月18日の香港民主派幹部一斉逮捕に対し、ポンペオ米国務長官は抗議声明を出し、マッコネル米上院院内総務は、「我々は香港と共にある(We stand with Hong Kong)」とネット上で表明した。



香港支援の国際的連帯


 革命100周年の2049年までに世界覇権の確立を目指す中国は、当面、南シナ海を完全に手中に収めた上で、南シナ海の海底深くに原子力潜水艦を配備し、米国本土に戦略核弾頭の照準を定めようと企んでいる。

 だがその前に、南シナ海への出口である足元の香港を完全制圧しなければ、中国の世界征服構想も「絵に描いた餅」になってしまうのである。

 香港問題は、単なる香港内部の政治対立という問題に留まらず、米中の世界覇権闘争と今後の人類文明の在り方に関わるレベルの問題なのである。

 そうした事もあり、今回の香港国家安全法案に対しては、香港のみならず、米国においても大きな反発を呼んでいる。

 トランプ大統領は5月21日、ホワイトハウスにおいて、中国共産党が香港国家安全法の実施を強行した場合、米国は「極めて強力な対処」をすると宣言した。

 また、オブライエン大統領補佐官は24日、中国が審議中の香港国家安全法案について、「中国は香港を支配しようとしている」と指摘した上で、中国が国家安全法を香港に導入した場合は、昨年制定した「香港人権・民主主義法」に基づき、中国の政府関係者らに制裁を科すことや、アメリカが香港に対して認めてきた優遇措置を見直すことなどを表明した。

 さらにクリス・バン・ホーレン上院議員およびパット・トゥーミー上院議員は、中国共産党の強い干渉から香港の自治権を守る為、超党派の法案を上院議会に提出した。同法案は、1984年の中英共同宣言と香港基本法に違反した組織や個人に強制的な制裁を課すよう米政府に求めている。

 香港の民主派活動家や多くの香港市民にとって、今回の「香港国家安全法案」の衝撃は、昨年の「逃亡犯条例改正案」の比ではないであろう。

 香港中心部では5月24日、香港国家安全法の成立に反対する数千人規模の抗議デモが行われ、警察は参加者に向けて催涙ガスを噴射するなどし、約200人が違法集会などの容疑で逮捕された。デモでは、「香港独立が唯一の道だ」と主張する参加者もいたという。

 間もなく天安門事件の6月4日が訪れる。

 香港では、毎年6月4日に大規模集会が開かれてきたが、今年は香港当局がコロナウイルス対策として8人を超える集会を禁止している為、合法的な集会は開催出来ないことになっている。

 その香港が、今や「第二の天安門」となりつつある。

 今年の夏から秋にかけての香港は、歴史的な激動の数カ月になるものと予想される。

 今秋9月に予定されている香港立法会選挙は、かつて例のない大混乱に陥る事は必至である。

 今回全人代で審議される香港国家安全法が成立すれば、民主派候補は大量に立候補を禁じられたり逮捕されるであろう。

 香港市民による抗議デモの過激さは、昨年の何倍もの勢いとなり、収拾がつかなくなる事は確実である。

 そうした場合、中国人民解放軍が治安出動し、香港市民を武力鎮圧する可能性は十分にある。

 1989年6月4日の天安門事件の大虐殺を、2020年の香港において決して再現させてはならない。

 その為には、香港支援の国際的な連帯が必要である。

 先にも述べたように、米国のトランプ大統領は、香港国家安全法の法制度が導入された場合には、「極めて強力な対処」をすると語っている。

 国際社会の多くもそれに同調するであろう。

 因みに、香港国家安全法案の内容には、外国の政治的組織の香港における活動禁止や、香港の政治的組織や団体と外国の組織の連携禁止等の条項も含まれている。

 この事は、香港民主化運動と国際社会との連携が急速に活発化している動きに対して、中国当局が強い警戒心を抱いてる事の表れである。

 国際社会は、単に香港の自由を守る為だけに闘っているのではなく、世界の自由を中国から守る為に闘っているのである。

 翻って我が国の現状はどうであろうか。

 今や先進諸国では日本だけが香港を無視し、国際社会から取り残されつつある。

 安倍政権は、直ちに親中派の財界人に忖度する事をやめて、習近平訪日の中止決定と、香港への支援を国際社会に向けて発信すべきである。










《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




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《連絡先

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