Top Page



 理事長プロフィール





FMラジオ番組
「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













国民的議論として論議すべきMMT


崖っぷちの国家財政への処方箋


[2019.7.20]




世界の基軸通貨ドルを発行する連邦準備制度(FRB)
PHOTO(C)WIKIPEDIA



MMT(現代貨幣理論)とは何か


 2008年のリーマンショックに伴う世界金融危機の後、欧米諸国では経済再建の為、大幅な金融緩和政策と積極的な財政政策がとられてきた。

 中央銀行による利下げのみならず、大規模な量的緩和が実施され、景気刺激の為に巨額の公的資金が投じられた。

 2008年までは約半世紀以上にわたり、世界の通貨供給量は、GDP総額の増加と歩調を合わせてきた。

 しかしながら、各国政府が大規模な金融緩和を開始した2009年以降は、世界の通貨供給量がGDP総額を大きく上回るようになり、その後も実体経済との乖離は、年々拡大し続けている。

 現時点で世界全体の通貨供給量は88兆ドル(約1京円)に上り、全世界の国内総生産(GDP)総額よりも16パーセント多い。

 かくして膨大な量のマネーが世界中に還流し、おかげで「100年に1度の危機」とまで言われた金融危機は回避され、世界経済は回復した。

 世界中で株価は高騰し、世界的インフレによって人々の所得も増え生活は豊かになった。

 リーマンショックから10年以上経った現在、米国では「現代貨幣理論(MMT: Modern Monetary Theory)」という財政理論が、米民主党などのリベラル勢力を中心に大きなブームになっている。

 MMTは、積極財政による需要喚起を掲げたケインズ政策によく似ているが、根本的に異なる。

 ケインズ政策の場合、不況期に政府が積極的に財政出動することで、民間投資や経済成長を促進して税収を回復させ、税収増により財政が均衡すれば政府は市場から手を引き、再び不況期になるまでは財政出動の必要がないという考え方である。

 これに対してMMTの場合は、不況期だけでなく、平時や好況期においても財政赤字を作り出して経済を回してゆかねばならないという考え方である。

 MMTの根底に在る考え方は、「全てのお金は本質的に負債」であり、「国家が負債を増やさなければ世の中にお金が流通しない」という思想である。

 MMTにとって、「財政の均衡」などは中長期的にも考慮する必要が無いばかりか、有害なのである。

 MMTが主張するのは、

■ 政府の債務残高は過去に政府が財政支出を税金で取り戻さなかったものの履歴でしかなく、それは民間で貯蓄されている。

■ 財政赤字は民間の資産増であり、民間への資金供給になる。

■ 貨幣は税の徴収のために政府が流通させたもので、貨幣価値は政府の信用力で支えられている。

■ 租税や公債は政府の財源調達手段ではなく、金利や購買力を調整する手段である。

■ 通貨発行権を持つ政府は、デフォルトのリスクや財政制約は無く、政府債務や財政赤字が膨らむこと自体には問題はない。

といったものであり、近代経済学が要求する財政均衡とは正反対の哲学である。


 MMTによれば、財政において最も重要なのは政府による信用創造(=借金による通貨供給)であり、プライマリーバランスのように税収の範囲内で予算を組むのは大間違いで、「政府が赤字をわざと作り出すようにしなければ世の中にマネーが流通しない」というものである。

 このように、MMTはそもそも従来の経済学とは根本的に立脚点が異なる為、経済学者達からは総攻撃を受けている。

 確かに、「政府は財政均衡など考えずにどんどん借金して財政を拡大しろ」、あるいは「どれだけ借金しても国家は破綻しないから大丈夫だ」などと言われたら、財政均衡論者のみならず、ケインズ主義者でさえ大いに反論するであろう事は容易に想像できる。

 しかしながら、グローバリズムが極限に達し、世界的規模で通貨供給が飽和状態になった現代世界においては、マネーの本質にまで立ち返り、既存の財政思想を根源的に見直す事が求められていると言えよう。



欧米で支持者を増やすMMT


 MMTは、欧米のリベラル勢力を中心に支持者層が広がっている。

 EUでは、金融政策が欧州中央銀行に一本化されている上、財政赤字に制限枠が課せられている為、EU加盟各国は自国の状況に応じたマクロ政策で対応できず、失業やインフレを抑えられなくなった国が多い。

 こうした国民の不満を背景に、フランスやスペインなどでは、MMTを掲げたリベラル政党などが支持を広げている。

 MMTの熱烈な信奉者である英国労働党のジェレミー・コービン党首は、「人民の量的緩和」を掲げ、「イングランド銀行(英国の中央銀行)が政府に資金を供給し、労働者向けの住宅や福祉、教育などの分野に積極的に財政資金を使って雇用を創出すべきだ」と提唱し、2015年の党首選で圧勝した。

 米国では、社会民主主義者として知られるバーニー・サンダース上院議員が、前回に引き続き、来年の大統領選への出馬を表明しているが、彼の支持者で、昨年の中間選挙で史上最年少で当選したオカシオ・コルテス下院議員は、MMTに基づいた「グリーン・ニューディール」政策を提唱している。

 因みに、MMTの代表的理論家として知られるステファニー・ケルトン教授は、サンダース上院議員の上級経済顧問でもある。

 MMTのこうした盛り上がりの背景には、グローバル化やIT化で失業や格差が拡大する中で、市場原理主義や緊縮財政主義の新自由主義に対する反動がある。

 貧富の格差が拡大し、失業者が溢れるような社会においては、政府主導による雇用創出や所得再分配の機能が重要になってくる。

 欧米においては、こうした「反緊縮」のムーブメントはリベラル勢力が担っているが、日本においては、むしろこれは伝統的に保守本流の役割であった。

 我が国の今回の参院選では、消費増税の是非や年金問題が主要な論点となった。

 どちらも国家財政の健全化に関連する重要問題であるが、いずれの政党の主張も具体的な解決策を欠いた状態で感情論に終始していた感がある。

 「全ての通貨は負債」とするMMTの立場からすれば、政府が借金すれば社会保障の財源も行政の財源も生み出されることになる為、消費増税の必要も無ければ、年金も余裕で給付可能となる。また、政府が社会保障や教育などに積極的に支出をすることで、雇用を拡大し経済全体を底上げする事にもなる。

 しかしながら、安倍首相は「財源に打ち出の小槌は無い」などと称し、財政問題についてはあくまで緊縮の立場から、財務官僚の代弁者に成り下がっていた。

 消費増税や年金問題が論点であるならば、MMTの是非こそ、今回の参院選で本格的に議論されるべきテーマであったはずである。具体的な解決策を目指した議論が無ければ、国民には選択肢すら無い。

 確かに、MMTは必ずしも万能理論ではないし、様々な問題を孕んでいる。

 だからと言って、我が国がこのままの財政状態で「永遠の微調整」を続ける事にも無理がある。「いずれ消費税は35パーセントまで引き上げなければやっていけない」との試算もある。

 あくまで既存経済学の立場から財政均衡に固執するか、それとも貨幣の本質にまで立ち戻ってマクロ経済を根本から見直すか、国民的な議論が必要な時代と言えよう。











《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
東京都千代田区永田町2-9-6
十全ビル 306号
TEL: 03-5501-3413


静岡事務所
〒420-0853
静岡市葵区追手町 1-19
天松追手町ビル2F
TEL: 054-205-6155
FAX: 054-205-6156