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「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













米朝首脳会談の歴史的意味


── 日米安保体制の「終わりの始まり」 ──


[2018.6.15]




米朝首脳会談で調印式を終えた金正恩委員長とトランプ大統領 (6月12日、シンガポール・カペラホテルにて)
PHOTO (C) REUTERS



米国第一主義のトランプ大統領による米国「撤退戦略」


 去る6月12日、シンガポールにおいて米朝首脳会談が開催された。

 この会談は、トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の「本音」が露呈されたという意味において、極めて重要な「歴史的会談」であったと言えよう。

 今回の米朝首脳会談の結果を受けて、マスコミや政治家などは右往左往しながら、「話が違う」とか「こんな筈ではなかった」などと騒ぎ立てているが、 米朝首脳会談がこのような形で収まる事は、むしろ当然の結果であり、十分に予想出来た筈である。

 人権財団は、これまでにも当サイトにおいて、「米国のアジアからの撤退戦略」について再三にわたり論じてきた。

 そもそもこの25年間、北朝鮮の核開発問題に対して過剰に反応し煽ってきたのは、米国の軍産複合体とその意向を受けたマスメディアであった。

 なぜなら、通常兵器を世界各国に高値で売り付ける事によって肥大化し続けてきた軍産複合体にとって、核兵器は最も邪魔な存在だからである。

 核兵器を持つ国家同士は決して戦争にならない為、軍産複合体にとっては武器が売れず、商売にならないのである。端的に言うと、「平和であっては困る」のである。

 「核なき世界」を提唱したプラハ演説によってノーベル平和賞を受賞したオバマ前大統領が、軍産複合体の傀儡であった事はよく知られている。

 また、ヒラリー・クリントンも軍産複合体からの全面的支援を受けていた為、万一、ヒラリーが大統領になっていれば、間違いなく北朝鮮を空爆したであろうと言われている。

 こうした米民主党政権と軍産複合体との癒着体質は、対日戦争を始めたフランクリン・D・ルーズヴェルト大統領の頃に始まり、朝鮮戦争に参加したハリー・S・トルーマン大統領を経て、ベトナム戦争に本格介入したリンドン・ジョンソン大統領の時代に確立された。

 一方、共和党のトランプ大統領は、選挙公約において、一貫して「軍産複合体の解体」を唱えてきた。

 軍産複合体からの支援を一切受けず、軍産複合体の解体を目指しているトランプ大統領にとっては、北朝鮮の核保有は容認可能な事であった。

 「アメリカ・ファースト」のトランプ大統領にとっては、北朝鮮が米本土に届くICBMさえ持たなければ、それで良かったのである。

 したがって米朝首脳会談においては、北朝鮮が「これ以上、核開発をしない」という方向性に道筋さえつければ、十分に成功なのであった。

 米国は、すでに「パックス・アメリカーナ」を放棄し、「世界の警察官」などやる余裕すら無いまでに財政は逼迫している。

 もはや米国には、海外において軍を展開するだけの能力が無いのである。

 軍事においては「米国は米国だけ守れば良い」、また経済においては「国際ルールよりも米国民の利益を」というのが、トランプの主張する「アメリカ・ファースト」である。

 トランプ大統領は、本格的に米国を「撤退戦略」へと転換させ、世界各地に展開中の米軍基地の撤収と、保護主義貿易への移行を図っている。

 これは、米国の伝統的なモンロー主義に回帰しようとする流れでもある。

 20世紀のアメリカに見られた対外的拡張主義政策は、あくまで1898年の米西戦争から始まったものであり、合衆国の本来の精神とは懸け離れた政策であった。

 オバマ大統領は2013年に「世界の警察官を辞める」と宣言したが、実行はしなかった。しかしながら、トランプ大統領は本格的に実行しようとしているのである。

 金正恩委員長にとってはあくまで「現体制の維持存続」が至上命題であり、トランプ大統領にとっては米国第一主義に基づく「全世界からの米軍の撤収」が真意である。

 もともと、トランプも金正恩も、最初から戦争を望んでいなかったのであるから、米朝首脳会談は、壮大な出来レースであったと言えよう。

 米朝間の戦争を望んでいたのは、軍産複合体とその意向を受けたマスメディアだけである。

 今後トランプ政権は、米朝協議を重ねつつ、「朝鮮戦争の終結宣言」へと向かうことは確実である。

 トランプ大統領が6月12日に発表した「米韓合同軍事演習の中止」と「在韓米軍の縮小・撤退」は、こうした流れから捉えなければならない。



「中国民主化」を日本外交の中心に


 またこの事態は、日米安保の問題と不可分である。

 そもそも在日米軍基地の存在理由の第一は、「朝鮮戦争が終結していない」という理由であった為に、その大前提が変われば、必然的に在日米軍の大幅縮小または撤退へと直結することになる。

 国際社会は、あくまで自己責任の世界である。

 トランプ大統領の本音は、「日本は日本自身で守れ」である。

 やがて米国の「核の傘」が撤去されるのも時間の問題となるだろう。

 かくして、米国第一主義によって能動的に孤立主義を目指す米国とは対称的に、日本は受動的に孤立化を余儀なくされることになる。

 日本にとって、6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談の「歴史的意味」があるとすれば、日米安保体制の「終わりの始まり」である。

 一方、今回の米朝首脳会談に国際社会の関心が集まっている状況とは逆に、ますます国際社会の関心が薄れているのが、中国による「南シナ海の軍事化」である。

 軍事的真空状態が生じた地域には、虎視眈々と中国が支配を狙っている事を忘れてはならない。

 万一、日本が米国の後ろ盾を失った場合には、中国あるいはロシアといった大国の庇護下に入るか、複数の小国による集団的安保同盟を形成するか、スイス式の国民皆兵による「重武装中立」の道を歩むか、といった究極の選択肢しか残されていない。

 国家の舵取りを一歩誤れば「亡国」に繋がるという意味においては、幕末以来の「国難」の到来と言えよう。

 いずれにせよ必要な事は、国家戦略や外交方針の根本的変更であり、それには本格的な国民的議論が必要である。

 戦後70年余の日本の外交政策の中心は、全面的な対米依存方針であり、それで何事もうまく回ってゆくと考えられてきた時代であった。しかしながら、「パックス・アメリカーナ」の時代が終わり、「パックス・シニカ」を目指す中国が世界のリーダーとして台頭しつつある現代においては、全面的な対米依存のままではやっていけないし、ましてや対中依存などあり得ない事である。

 そこで人権財団としては、これまで我々が一貫して主張してきた「中国民主化」こそが、日本の外交政策の中心となる事が望ましいと考える。

 共産党一党独裁から皇帝独裁による侵略国家へと変貌を遂げた中華帝国主義を打倒し、中国人民の民主的な自治に基づく自由な国家が実現されれば、我が国は同じ価値観を持つ国家として全面的に支援し、互恵共存の同盟関係を築く事が可能となる。

 これこそが、我が国がアジアの安定と世界の平和に寄与し得る唯一の道であり、これ以外の対中外交政策は誤りであると言って過言ではない。












《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




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《連絡先

一般財団法人
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