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《 寄 稿 》
新文明構想
大和一言主 著
『 新文明構想 』 目次
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新 文 明 構 想
第 8 回
ベーシック・インカムは可能か
最低所得保障制度の必要性
21世紀に入ると、いずれの先進諸国においても、生産手段の機械化や電子化に伴い、労働者の失業が深刻な社会問題になっています。
労働の対価としての所得が得られなくなれば、他の手段によって所得が保証されない限り、人間が生きてゆくことは出来なくなります。
そこで、近年ではベーシック・インカム論が、ヨーロッパ諸国を中心に議論されるようになりました。
ベーシック・インカムとは、政府が全ての国民に対して最低限の生活に必要な一定額の現金を定期的に無条件で給付する制度のことです。
こうした最低所得保障の構想そのものは、すでにアメリカ独立戦争の頃に思想家のトマス・ペインが唱えており、資本主義の成立以前から存在していた考え方です。
資本主義が終焉しつつある現代、再び最低所得保障制度の必要性が論じられるようになったことは、歴史の必然と言えるでしょう。
スイス国民が拒否したベーシック・インカム
2016年6月5日、スイスでベーシック・インカム制度の導入の是非を問う国民投票が行われました。
その結果、賛成23・1%、反対76・9%という圧倒的大差で否決されました。
反対理由として最も多かった意見が「財源不足」です。
もしスイスで実行しようとするならば、年間2080億スイスフラン(約22兆7千億円)超という巨額の費用が必要とされ、国家財政は圧迫されます。
そうなれば、かなりの増税をせざるを得なくなり、民間経済も停滞します。
「財源不足」に次いで多かった反対理由が、「現行年金制度の方が得」というものでした。
スイスの現行の年金支給額は、新たなベーシック・インカムの予定支給額よりも多い為、年金を廃止してベーシック・インカムを導入するという案は、高齢者の人達からすれば、到底受け入れ難い話になります。
続いて多く挙げられた反対理由が、「労働意欲の減退」という問題であります。
「ベーシック・インカムが支給されたら、国民は働く気が無くなり、働かない国民が増えれば税収が減り、財源がすぐに底を尽いてしまう」という反対論です。
他に、「ベーシック・インカムを目当てに不法移民が多数流入して来る」という懸念も多かったようです。
このように、ベーシック・インカムには、人々の心理的抵抗が相当大きいという事が明らかになりました。
国民投票で4人の内3人以上が反対ということは、これを公約にすれば必ず負ける、というレベルの話です。
スイスのみならず、ほとんどの先進国では同様の結果になると思われます。
ベーシック・インカムは、究極の理想論ではありますが、現実化は難しいと言わざるを得ません。
これらの問題を全て解決し得る方法論については、後で述べることにしましょう。
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一般財団法人 人権財団
設立日:
2015年 9月28日
理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)
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《連絡先》
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