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《 寄 稿 》

新文明構想

 大和一言主 著

『 新文明構想 』 目次













新 文 明 構 想

第 2 回

階級社会をもたらした複利システム



    



通貨の登場

 歴史上最初の通貨は穀物で、古代メソポタミアが発祥と言われています。

 穀物を通貨として流通させることにより、物々交換の不便さが圧倒的に軽減されたわけですから、穀物通貨システムは、メソポタミアに留まらず、周辺世界に急速に普及していきました。

 やがて我が国においても、稲作に先行して、まず穀物通貨のシステムがユーラシア大陸から日本列島に伝播し導入されたものと考えられます。

 1万年以上も自給自足の食料安定システムを続けてきた縄文社会においては、わざわざ稲作を取り入れる必要などありませんでした。

 しかしながら、物々交換を簡便化するシステムとしての穀物通貨が、その便利さゆえに社会に広汎に普及した結果、やがて穀物通貨を自前で調達しようとする人々が現れ、国内で稲作を始め、徐々に縄文社会を崩壊させていったものと見られます。



利子の成立

 穀物通貨が社会に定着するようになると、やがて穀物よりも簡便な金・銀・銅といった金属が代替されるようになり、通貨として流通するようになりました。

 依然として穀物が通貨の主流であった事は変わらないのですが、中東やヨーロッパでは金や銀が、また東アジアでは銅が、並行通貨として流通するようになりました。

 利子すなわち金利の発祥については、通貨と同じくらい歴史が古く、利子のシステムも古代メソポタミアから始まったようです。

 紀元前18世紀のバビロニアのハムラビ法典では、銀の貸付利息は年2割が上限と定められており、また返済に際して借り手が銀を持たない場合は、相当額を穀物で弁済しても良いことが記されています。

 これを見れば、すでに約4千年前には、利子が制度として確立していたことが分かります。



複利システムの発明


 国家を凌駕する富の実現を可能にし、世界の歴史を動かしてきたのは、複利のシステムです。

 これは、一般に「雪ダルマ式」と言われる方法で、元金により生じた利子を加算した額が次期の元金となりますから、残高は幾何級数的に拡大していくことになります。

 何世代にもわたり富を蓄積する富裕層は、必ずこの複利システムを使っています。

 例えば、年1割の利率として複利で資金を増加させ続けたとすれば、50年後には117倍、100年後には13780倍になります。

 もしバビロンの商人のように年2割の複利で貸付けるならば、50年後には9100倍、100年後にはなんと、82817974倍にまで元金が増えることになってしまいます。

 中世ヨーロッパの高利貸しは、年利2割を超えていたそうですから、親子3世代にわたって高利貸しを続ければ、確実に大財閥になれたはずです。

 こうした複利こそが、格差社会形成のメカニズムです。

 かりに、同じ立場の人々が同じ金額の元手を持っていた場合でも、利子を付けたグループと、利子を付けないグループに分けただけで、3世代も経てば途方もない富の格差が開くことになります。

 このようなシステムに異常さを感じさせない社会こそ、異常と言えるのではないでしょうか。



地球を食い潰す利子システム

 少数の富裕層が複利で豊かになってゆくのとは逆に、多くの債務者達は複利でますます借金が膨らみ、貧困に陥ってゆきます。

 中産階級は没落して貧困層に転化し、一握りの富裕層と大多数の貧困層とに階級は二極分化します。

 1パーセントの富裕層はますます富み、99パーセントの貧困層はますます困窮を極めるようになります。

 債務者が利子をお金で払えなくなった場合は、破産して物納することになります。いわゆる「差し押さえ」です。

 その際、個々人のレベルでは、お金の代わりに物で弁済しているわけですが、マクロレベルでは、莫大な債務相当分の資源が地球から削り取られていることになります。

 もともと元金を超える利子というものは空想上の観念なのですが、そうした架空の存在を実体として調達しようとするならば、環境を破壊して、貴金属や資源などを掘り出したり、森林を伐採したり、動物を獲り尽くすなどしなければなりません。

 つまり、利子が地球を食い潰すシステムになっているのです。

 今や、人類社会に利子が誕生してから約4千年、近代的な金融システムが成立してから約400年を経た現代世界は、地球環境の破壊と世界的貧困層の増大によって、崩壊の危機を迎えています。

 1万年以上もの間、持続可能な社会を続けられた縄文社会と、一体何が違っていたのでしょうか。






    



《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




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